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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)202号 判決

アメリカ合衆国

07922-2727 ニュージャーシイ バークレイ ハイツ、オーク ウエイ 1

原告

エーティーアンドティーテクノロジーズ、インコーポレーテッド

代表者

ジョセフ エー カメロン

訴訟代理人弁理士

岡部正夫

加藤伸晃

浅井章弘

東京都千代田区霞が関三丁目4番3号

被告

特許庁長官

麻生渡

指定代理人

松野高尚

平野雅典

奥村寿一

涌井幸一

主文

特許庁が、昭和63年審判第8488号事件について、平成元年4月20日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告(旧名称、ウエスターン エレクトリック カムパニー インコーポレーテッド)は、1978年12月5日にアメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張して、昭和54年12月5日、名称を「ディジタル伝送方式」とする発明(以下「本願発明」という。)につき特許出願をした(昭和54年特許願第156944号)が、昭和63年1月22日に拒絶査定を受けたので、同年5月16日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を昭和63年審判第8488号事件として審理したうえ、平成元年4月20日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年5月29日、原告に送達された。

2  本願発明の要旨

別添審決書写し記載のとおりである。

3  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、「FUJITSU」、Vol 24、No6、P855~867「新PCM-24端局装置」(以下「引用例」という。)を引用し、本願発明は引用例に記載された事項(以下「引用例発明」という。)に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと判断し、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由中、本願発明の要旨、引用例の記載内容、本願発明と引用例発明との一致点・相違点の各認定は認める。相違点についての検討のうち、相違点〈1〉についての判断を争い、同〈2〉についての判断はあえて争わない。

審決は、相違点〈1〉についての検討において、同相違点が両発明の同一目的の実現における手法と技術思想の相違を反映するものであることを看過したため、それが有する意味の判断を誤り、それに基づき、本願発明は引用例発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとの誤った判断をしたものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  本願発明の目的は、従来技術の音声あるいは信号チャネル容量に影響を与えることなく、デイジタルチャネルバンク形の伝送方式にデータリンクを追加するものである。簡単にいえば、追加のデータリンクを信号方式サブフレームチャネルの主要部を「借用」して伝送するようにしたものである(甲第2号証明細書7頁15行~8頁1行)。

上記目的は、以下の方式により達成される。

まず、信号方式サブフレームチャネル中にデータチャネルを時分割多重化するための回路(例えば本願明細書第3図及び第8図に示す回路)により、6ビットからなる完全な信号方式フレーミングパターンを間欠的で周期的な方法で、データチャネルからの多重データビットのブロックをその間に挿入しながら伝送する。そして、サブフレーム回復装置が信号方式フレーミングパターンを回復するとき、前記データビットブロック系列が前記信号方式フレーミングパターンをエミュレートしないようにするために、前記データビット系列内の所定の場所にスポイラビットが挿入される。

具体的には、一つおきのフレームよりなる信号方式サブフレームの193番目のビットからなる系列(信号方式サブフレームチャネル)において信号方式サブフレームパターン(本実施例にあっては、〔111000〕のパターン)を送信するとともに、他の一つおきのフレームの第193番目のビットからなる系列においてフレーム同期パターン(同〔101010〕のパターン)を送信する。6フレームごとにワードの第8ビット(D8)に信号方式情報が組み込まれた信号方式フレームは、信号方式サブフレームパターンが1から0あるいは0から1へ変化した直後のフレームとして検出される(同10頁10行~11頁8行、甲第3号証2頁7~13行)。

本願発明にあっては、一つおきのフレームよりなる信号方式サブフレームの第193番目のビットによって形成される信号方式サブフレームチャネルにおいて、常に信号方式サブフレームパターンを送信するのではなくて、例えば、本願願書添付図面の波形図にTデータ(第5図)あるいはデータ+SF(第6図)で示す24ビットからなるデータビットブロック(例えば、集線、保守、警報、保護切替データ)、これに続く12個の信号方式フレームビット(SF)、これに続く24個のデータビットブロック、これに続く12個の信号方式フレームビット・・・以下同様の系列・・・として示される形になるように送信される。したがって、信号方式フレーミングパターンは、間欠的で周期的な方法で伝送され、このように信号方式フレーミングパターンが中断している間に上記データブロックが伝送される。

本願発明においては、信号方式サブフレームチャネル内においてデータビットブロックが多重的に伝送される際も、データビットブロックが多重的に伝送されていないときと同じ完全な信号フレーミングパターンが、間欠的にではあるが送られている。受信側では、一度信号方式フレーミングパターンを検出するとそれに同期してカウンタが自走し連続したフレーミングパターンを発生する。この連続したフレーミングパターンは、自走するカウンタのフライ・ホイール効果により次の信号方式フレーミングパターンが間欠的に来るまで正しい位相で維持される。この次の信号方式フレーミングパターンの検出でカウンタの自走は再びタイミングがとられる。

このように構成することにより、前述のように、従来技術の音声あるいは信号チャネル容量に影響を与えることなく、しかも間違った信号方式フレーミングパターンの認識を抑制しつつデータリンクを追加することができる。

他方、引用例には、PCM-24端極装置における伝送方式のフレーム構成が開示されている(甲第5号証の2、図-4)。

特に、本願発明に関係する信号方式サブフレームチャネルに着目すると、〔00111〕の5ビットの信号方式フレーミングパターンと1ビットの0あるいは1の対局警報用信号からなっている。すなわち、対局警報ビットを含めない場合は6ビットパターンである信号方式フレーミングパターンを5ビットの不完全なフレーミングパターンとし、残りの1ビットを対局警報ビットに充てている。そして、この1ビットの対局警報用信号が本願発明の多重データに該当する。

2  審決は、信号方式フレーミングパターンが本願発明においては6ビットに、引用例発明においては5ビットにそれぞれされているという点(相違点〈1〉)につき、引用例発明は「対局警報用に1ビツト用いることにより、フレーミングパターンの認識率が低下し、かつ、データ伝送能力も低下することを熟知した上で、あえて重要度の高い対局警報用に1ビツトさいたと見るのが相当であって、この対局警報の必要性がなければ、その1ビツトをフレーミングパターンに割当て本願の発明のごとき6ビツトフレーミングパターンをとるであろうことは、当業者にとっては自明のことと言うべきである。」(審決書6頁7~16行)とし、「従って、この相違点は当業者にとっては設計的事項にすぎない。」(同6頁16~17行)と判断している。

しかし、引用例発明は、本願発明と同じく、「フレーム内へ組織された時分割多重デイジタルメツセージ信号を伝送し受信するディジタル伝送方式であって、各フレームは複数のメツセージチヤネルのそれぞれからのPCMワードとフレーミングビツト(フレーム同期ビツト)とを有し、ここに各メツセージチヤネル用の信号方式情報は、6フレームごとに個々のPCMワードの最小下位のビツト位置に信号方式ビツトの形で伝送され、信号方式ビツトの位置は1つおきのフレームの集合的なフレーミングビツト位置により形成された信号方式サブフレームチヤネル内の所定ビツトの信号方式フレーミングパターンにより認識されるようになしたディジタル伝送方式」(審決書4頁8行~5頁1行)を従来技術として、この従来技術におけると同じく信号方式ビットの位置を信号方式フレーミングパターンにより認識されるようにしつつ、これに加えて別の情報である対局警報(本願発明の多重データに対応する。)をも伝送することを目的とするものであるから、ここにおいて、対局警報の必要性がないということはおよそ考えられないことである。対局警報の必要性がないとして、それに割り当てていた1ビットを信号方式フレーミングパターンに割り当て、信号方式フレーミングパターンを本願発明と同じ6ビットにすること自体が可能なことは審決の述べるとおりであるが、そのようにされたものは、もはや本願発明や引用例発明の特徴を何ら有しない単なる従来技術にすぎない。

そうとすれば、本願発明及び引用例発明の目指す従来技術の改良の観点から見た場合、信号方式フレーミングパターンを6ビットと5ビットのいずれにするかが当業者にとっては設計的事項にすぎないということはありえず、これを設計的事項にすぎないとする審決の上記判断が誤っていることは明らかである。

もっとも、引用例発明が、対局警報用に割いた上記1ビット以外に、本願発明における多重データブロックに相当するものを有しておれば、従来技術の改良の観点からも上記対局警報用1ビットは付加的なものにすぎないと見て、審決のように、信号方式フレーミングパターンを6ビットと5ビットのいずれにするかは当業者にとっては設計的事項にすぎないということができようが、引用例発明は上記1ビット以外に本願発明における多重データブロックに相当するものを何ら有していないのである。

3  本願発明と引用例発明における6ビットと5ビットという信号方式フレーミングパターンのビット数の相違は、審決のいうような単なる設計的事項における相違ではなく、従来技術を出発点にその改良としてデータ多重化を図るに当たり、それぞれが採用した方法と技術思想そのものの相違を顕現したものである。

すなわち、従来技術を出発点にしてデータ多重化を図るに当たり、信号方式フレーミングパターンそのものに着目すれば、本願発明においては、従来技術のままにこれを6ビットとし、その完全性を維持しつつ、その代わりに、従来技術におけるようにこれを中断なく周期的連続的に伝送するのでなく、中断を伴って、すなわち周期的ではあるが間欠的に伝送することにより、その中断の間に多重データビットブロックを挿入することを可能にしているのに対し、引用例発明においては、信号方式フレーミングパターンの完全性を犠牲にし、そのビット数を6から5に減らすことにより、残りの1ビットを多重データビット(対局警報用ビット)に当てることにしており、そこには、上記の意味で完全な信号方式フレーミングパターンを維持しつつ、これを間欠的に伝送することによりデータ多重化を図るという本願発明の技術思想は全く見られない。

引用例発明においても、上記5ビットとなった後の信号方式フレーミングパターンのみに着目すれば、間に対局警報用1ビットを挟みつつ、これが周期的に伝送されるから、審決のいうように「信号方式フレーミングパターンを間欠的で周期的な方法で、データチヤネルからの多重データビツトのブロツクをその間に挿入しながら伝送する」(審決書5頁1~4行)と表現することも可能であろう。

しかし、上記のとおり、本願発明においては、従来技術におけると同じく6ビット全部が信号方式フレーミングパターンに充てられつつこれが間欠的に伝送され、その中断の間に多重データビットブロックを挿入するのであるから、従来技術における信号方式フレーミングパターン自体のビット数を減らす必要がないのに対し、引用例発明においては、従来技術において信号方式フレーミングパターンに充てられていた6ビット自体は周期的連続的に伝送されるため、多重データ(対局警報)を伝送するためには信号方式フレーミングパターン自体のビット数を減らさなければならず、多重データの伝送と信号方式フレーミングパターンのビット数の減少とが必然的に結合しているという相違は厳然として存在するのである。

この技術思想の違いに由来する相違の意義を無視することは許されない。

4  多重データビット伝送の手法における本願発明と引用例発明の上記相違は、現実には次のような作用効果における相違となって現れる。

本願発明の手法においては、信号方式サブフレームパターン回復装置の性能が許す範囲で多重データブロックを挿入することができ、実施例では36サブフレーム当たり24ビットの多重データが伝送できるのに対し、引用例発明の手法においては、信号方式サブフレームパターンのパターン認識率が著しく劣化しない範囲で信号方式サブフレームパターンのビットを多重データに割くことができ、6サブフレーム当たり1ビット(36サブフレーム当たり6ビット)の多重データが伝送できる。このように、多重データビット伝送の手法における上記相違は、これに基づき伝送できる多重データブロックの量において顕著な相違をもたらすのである。

被告は、6ビットの信号方式フレーミングパターンの間に1ビットの多重データブロックを挿入して伝送するものも本願発明に包含されるとして、これを前提に、本願発明と引用例発明とで作用効果に顕著な差異は認められない旨主張するが、以下に述べるとおり失当である。

本願発明は、その発明の要旨に示されるとおり、「・・・前記データビット系列が前記信号方式フレーミング・パターンをエミュレートしないようにするために、前記データビット系列内の所定の場所にスポイラビット(SB)を含むことを特徴とするデイジタル伝送方式」であり、上記スポイラビットを必須の構成要件とするものである。そして、ここでスポイラビットがなければエミュレイトされるおそれのあるものとされている信号方式フレーミングパターンは6ビットであり、かつ、データビット系列が5ビット以下のときこれが6ビットの信号方式フレーミングパターンをエミュレイトすることはおよそありえないから、データビット系列のビット数は少なくとも6であることが前提にされていることは、明らかといわなければならない。

1ビットのデータビット系列でも6ビットの信号方式フレーミングパターンをエミュレイトするとすることを前提にした本願発明におけるスポイラビットの役割についての被告主張は、1ビットのデータビットを集めたものがたとい信号方式フレーミングパターンをエミュレイトしていようとそれ自体何の問題もないことであるから、技術的に全く理解できない主張であり、失当である。

また、6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に1ビットのデータビットを挿入した場合の具体的回路装置についての被告の説明も、送信されてきた信号方式フレームと位相のずれた信号方式フレーミングパターンでは、どのフレーミングパターンが信号方式フレームと同期している基準となるものか判別する術がないから、技術的に全く理解できないものであり、失当である。

5  本願発明の採用した手法は、デイジタル伝送方式がもともと本来的に有するフライホイール効果という物理的な性質に着目しこれに依存して採用されたものであり、このような事柄を離れて、データ多重という一般的な観点だけから、観念的あるいは論理的に選択されうるものではない。

したがって、両者は設計上の二者択一的選択にすぎないとする被告主張は失当である。

6  以上のとおり、信号方式サブフレームパターンのビット数が本願発明においては6、引用例発明においては5であるという両発明の相違点(相違点〈1〉)は、それぞれの発明における多重データ伝送の手法・技術思想の相違と直結するものであるにもかかわらず、審決は上記相違点の検討に当たりこの事実を看過し、そのため上記手法・技術思想の相違が有する意味を実質上全く検討しないまま、上記相違点は当業者にとっては設計的事項にすぎないとしたものであり、このような審決の判断が誤っていることは明らかである。

第4  被告の反論の要点

審決の認定、判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は理由がない。

1  原告が本願発明及び引用例発明の各内容の説明に使用している事項がそれぞれ本願明細書及び引用例に記載されていることは認める。

しかし、本願明細書中の上記記載事項の中には、本願発明の実施例についてのものではあっても、本願発明そのものについてのものとはいえないものが含まれている。本願発明の要旨は、特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その実施例として示されているものに限定されるわけではないから、実施例のみに基づいて本願発明を論ずることは許されない。

すなわち、本願発明は、その発明の要旨に示されるとおり、一つおきのフレームよりなる信号方式サブフレームの例えば193番目のビットからなる系列(信号方式サブフレームチャネル)を送信するとともに、他の一つおきのフレームの例えば193番目のビットからなる系列においてフレーム同期パターンを送信するものであり、ここでは、6フレームごとにワードの例えば第8ビットに信号方式情報が組み込まれた信号方式フレームは、間欠的で周期的な方法で伝送される6ビットの信号方式サブフレームパターンによって認識され、この信号方式サブフレームパターンの間に多重データビットのブロックが挿入され伝送されるものとされている。

本願発明は、さらに、多重化サブフレームチャネル中に埋め込まれた信号方式フレーミングパターンを回復する信号方式サブフレーム回復装置をも有するものとされているが、この信号方式サブフレーム回復装置は、フライホイール効果を有するものに限定されてはいないから、それを有しないものをも包含するといわなければならない。そして、信号方式フレーミングパターンの同期の維持を考慮すると、6ビットの信号方式フレーミングパターンの間に挿入される多重データビットが例えば1ビットであるものも本願発明に当然含まれる。

原告は、本願発明がスポイラビットを必須の構成要件とすることと、スポイラビットによりエミュレイトの防止が図られている信号方式サブフレームパターンが6ビットであることを根拠に、多重データのビット数は5以下ではありえないと主張するが、失当である。例えば多重データビットを1ビットずつ伝送し、これらを受信側で一つのデータブロックとして判別する場合、この集められたデータを信号方式フレーミングパターンと誤認しないようにするためにスポイラビットを挿入することは、審決のいうとおり周知の技術事項であるからである。

このように、本願発明は、6ビットの信号方式フレーミングパターンの間に、例えば1ビットの多重データビットを挿入して伝送するものをも包含する発明である。

一方、引用例発明においては、一つおきのフレームよりなる信号方式サブフレームの193番目のビットからなる系列(信号方式サブフレームチャネル)を送信するとともに、他の一つおきのフレームの193番目のビットからなる系列においてフレーム同期パターンを送信する。そして、6フレームごとにワードの第8ビットに信号方式情報が組み込まれた信号方式フレームは、信号方式サブフレームパターンによって認識される。ここでは、本願発明における多重データビットに相当する対局警報用ビットは、5ビットの信号方式フレーミングパターンの間に1ビット挿入されて伝送される。

以上のとおりであるから、本願発明中6ビットの信号方式フレーミングパターンの間に1ビットの多重データビットを挿入して伝送する構成のものを取り上げた場合、本願発明と引用例発明とで、信号方式フレーミングパターンの間にデータビットを「間欠的で周期的に」挿入する構成は同様であり、ただ信号方式フレーミングパターンを構成するビット数に6と5の相違があるにすぎないということができる。

2  6ビット信号方式フレーミングパターンを連続的周期的に伝送する従来技術を前提にして、信号方式フレーミングパターンを「間欠的で周期的に」伝送しつつその間にデータビットを挿入するものに改良しようとする場合、信号方式フレーミングパターンは連続していなければならないものであるから、信号方式フレーミングパターンの連続性を破ってその間にデータビットを挿入することはできない。そうすると、信号方式フレーミングパターンの間にデータビットを挿入する方法は、例えば引用例発明のように信号方式フレーミングパターンの1ビットを削ってその1ビットをデータビットに充てるか、信号方式フレーミングパターンはそのままにして信号方式フレーミングパターンの後にデータビットを挿入していくかのいずれかの方法しかない。

引用例発明では、6ビットの信号方式フレーミングパターンの1ビットを削ることにより、信号方式フレーミングパターンの認識率の低下という犠牲の下に重要度の高い対局警報用データを挿入したが、6ビットの信号方式フレーミングパターンをそのままにして対局警報用データを送るのであれば、そのデータビットは当然6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に挿入していかなければならない。

このように、信号方式フレーミングパターンの間にデータビットを挿入する場合には、引用例発明におけるように6ビット中の何ビットかを削ってそこに挿入するか、本願発明におけるように信号方式フレーミングパターンの6ビットはそのままにしてその間にデータビットを挿入するかのいずれかの方法しかなく、かつ、引用例に信号方式フレーミングパターンの6ビット中の1ビットを削ってそこにデータビットを挿入するという形で信号方式フレーミングパターンの間にデータビットを挿入するという技術思想が記載されている以上、同じ技術思想を実現するもう一つの方法である信号方式フレーミングパターンの6ビットはそのままにしてその間にデータビットを挿入するという本願発明の方法を採用することも、当業者なら当然考慮できる設計事項にすぎない。

また、一般に、時分割により多くの種類のデータを送る場合、その伝送フォーマットさえ決定されれば、それを実現する具体的な回路装置を構成することは、当業者にとって何ら困難なものではない。

例えば、6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に1ビットのデータビットを挿入した場合、信号方式フレーミングパターンを用いて信号方式フレームを検出すればよいのであるから、最初の信号方式フレーミングパターンの立下がりで信号方式フレームを検出したとすると、次の信号方式フレームは6フレーム後に現れるから、これをフレームカウンタでカウントして次の信号方式フレームを見つけることができる。さらに、次の信号方式フレームは、信号方式フレーミングパターンの立下がりを検出してから4フレーム後に現れるので4フレーム後に出力を発生するように再設定したフレーミングカウンタでカウントして信号方式フレームを検出できる。このように、6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に1ビットのデータビットを挿入した場合には、信号方式フレーミングパターンの立下がりを検出してから2フレームずつ信号方式フレームがずれてくるので、この周期に合わせてフレームをカウントすれば信号方式フレームを検出することができるのである。

また、6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に1ビットのデータを挿入した場合、後の5ビットをダミー信号として無視すれば、信号方式フレーミングパターンの立下がりを検出してから6フレームをカウンタで数えれば、信号方式フレーミングパターンが送られてこないフレーム周期でも信号方式フレームを検出できる。

以上のとおりであるから、信号方式フレーミングパターンを「間欠的で周期的に」伝送しつつ、その間にデータビットを挿入してデータを伝送する場合、引用例発明のように元の信号方式フレーミングパターンのビットの一部を削ってその削ったビットをデータビットに充てるか、本願発明のように信号方式フレーミングパターンは元の6ビットのままにしておいてその後にデータビットを挿入するかは二者択一の関係にあり、どちらを選択するかは当業者が任意に採用しうる設計的事項にすぎず、相違点〈1〉についての審決の判断に誤りはない。

もっとも、本願発明においては引用例発明に比べてより多量のデータビットを挿入する構成とすることも可能であるが、これは6ビットの信号方式フレーミングパターンをパターンとしてはそのままにしてその間にデータビットを挿入する手法を採用したことの自明の作用効果にすぎない。

まして、本願発明中6ビットの信号方式フレーミングパターンの間に1ビットの多重データビットを挿入して伝送する上記構成のものを取り上げた場合、本願発明と引用例発明とはその作用効果においても格別の差異はない。

したがって、審決が本願発明における6、引用例発明における5という信号方式フレーミングパターンを構成するビットの数の相違(相違点〈1〉)を当業者にとっては設計的事項にすぎないと判断したのは正当であり、審決が多重化の手法・技術思想そのものの相違を看過したとする原告の主張は失当である。

第5  証拠

本件記録中の書証目録の記載を引用する(書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。)。

第6  当裁判所の判断

1  本願発明は、その発明の要旨前段に示されている「フレーム内へ組織された時分割多重デイジタルメツセージ信号を伝送し受信するデイジタル伝送方式であって、各フレーム(例えば第1図)は複数のメツセージチヤネルのそれぞれからのPCMワードとフレーミングビツト(フレーム同期ビツト)とを有し、ここに各メツセージチヤネル用の信号方式情報は、6フレームごとに個々のPCMワードの最小下位のビツト位置(例えば8)に信号方式ビツト(例えば1-BITの信号)の形で伝送され、信号方式ビツトの位置は1つおきのフレームの集合的なフレーミングビツト位置(例えばビツト193)により形成された信号方式サブフレームチヤネル内の6ビツトの信号方式フレーミングパターン(例えば111000)により認識されるようになしたデイジタル伝送方式」(審決書2頁9行~3頁3行)に係る発明であり、この伝送方式に係る従来技術を前提に、より多くの情報を伝送するためにデータ容量を追加したいという要求に応えるため、上記信号方式サブフレームチャネル内の信号方式サブフレームパターンにより信号方式ビットの位置が認識されるようにしつつ、これに加えて追加の情報(データ)を信号方式サブフレームチャネルを用いて伝送するという形でこれを改良することを目的とする発明であること、及び、引用例発明も「フレーム内へ組織された時分割多重デイジタルメツセージ信号を伝送し受信するデイジタル伝送方式であって、各フレームは複数のメツセージチヤネルのそれぞれからのPCMワードとフレーミングビツト(フレーム同期ビツト)とを有し、ここに各メツセージチヤネル用の信号方式情報は、6フレームごとに個々のPCMワードの最小下位のビツト位置に信号方式ビツトの形で伝送され、信号方式ビツトの位置は1つおきのフレームの集合的なフレーミングビツト位置により形成された信号方式サブフレームチヤネル内の所定ビツトの信号方式フレーミングパターンにより認識されるようになしたデイジタル伝送方式」(審決書4頁8行~5頁1行)に係る発明であり、上記伝送方式において上記信号方式サブフレームチャネル内の信号方式サブフレームパターンにより信号方式ビットの位置が認識されるようにしつつ、これに加えて追加の情報(データ)を信号方式サブフレームチャネルを用いて伝送するものである点において本願発明と一致することは、当事者間に争いがない。

すなわち、本願発明と引用例発明とは、上記伝送方式において、信号方式サブフレームチャネルのビットを従来技術のように単に信号方式ビットの位置を認識するための信号方式フレーミングパターンを構成するためのビットのみに使用するのでなく、そのうちの一部は信号方式フレーミングパターンを構成するためのビットとして使用しつつ、同時に他の一部をこれとは別の情報(データ)の伝送のためのビットとして使用するという点で同一である。

2  このような本願発明と引用例発明との、信号方式フレーミングパターンを構成するビット数が本願発明においては6であるのに対し引用例発明においては5であるという相違点(相違点〈1〉)につき、審決は、「この相違点は当業者にとって設計的事項にすぎない。」(審決書6頁17~18行)とし、その理由として、「対局警報用に1ビツト用いることにより、フレーミングパターンの認識率が低下し、かつ、データ伝送能力も低下することを熟知した上で、あえて重要度の高い対局警報用に1ビツトさいたと見るのが相当であって、この対局警報の必要性がなければ、その1ビツトをフレーミングパターンに割当て本願の発明のごとき6ビツトフレーミングパターンをとるであろうことは、当業者にとつては自明のことと言うべきである。」(同6頁7~16行)と述べる。

信号方式フレーミングパターンを構成するビットの数のみに着目するときは、引用例発明において「対局警報の必要性がなければ」それに割り当てられるべき1ビットを信号方式フレーミングパターンに割り当て本願発明におけるように6ビット信号方式フレーミングパターンをとることが、当業者にとって自明のことであることは、審決の述べるとおりであろう。

しかし、そのように引用例発明の設計を変更して6ビット信号方式フレーミングパターンを採用したとき生まれるものは、本願発明において従来技術とされている、信号方式サブフレームチャネルのビット全部を、信号方式フレーミングパターンを構成するビットとして、すなわち信号方式ビットの位置の認識のための情報のためのみに使用する伝送方式にすぎない。これは、信号方式フレーミングパターンが6ビットで構成されている点においては本願発明と同一であっても、信号方式サブフレームチャネルのビットに多重データビットブロックを挿入することにより、信号方式ビットの位置の認識のための情報とともに、それ以外の情報の伝送のために使用することを技術課題とし、これを実現した本願発明とは、この技術課題と関連する限りにおいて全く無縁のものといわなければならない。

このように、ある技術課題が、一方を選べば達成され他方を選べば全く達成されないという関係にあるとき、その技術課題との関連で両者のいずれを選択するかを設計的事項にすぎないとすることができないことは明らかである。

そうとすれば、本願発明が上記技術課題を技術課題とするものである以上、本願発明と引用例発明における信号方式フレーミングパターンを構成するビット数の6と5の相違を審決の述べる理由により設計的事項とすることはできないものといわなければならない。

3  被告は、本願発明において信号方式フレーミングパターンの間に挿入されるデータビットの数は特定されておらず、それが例えば1ビットであるものも本願発明に包含されることを前提に、6ビット信号方式フレーミングパターンの従来技術を改良して信号方式フレーミングパターンを「間欠的で周期的に」伝送しつつその間にデータビットを挿入しようとする場合、本願発明におけるように6ビットはそのままにしてその後に挿入するか、引用例発明におけるように6ビット中の何ビットかを削ってそこに挿入するかは二者択一の関係にあるから、信号方式フレーミングパターンを「間欠的で周期的に」伝送しつつその間にデータビットを挿入する技術思想が引用例に見られる以上、本願発明の方式に想到することは当業者にとり容易である旨主張する。

しかし、本願発明において信号方式フレーミングパターンの間に挿入されるデータビットの数が6の倍数とされていることは、本願発明において必須の要件とされているスポイラビットの役割と、信号方式フレーミングパターンの機能とに照らして明らかといわなければならないから、被告の主張は前提において既に誤っており、採用できない。

すなわち、まず、本願発明が、その発明の要旨に示されるとおり、「・・・前記データビット系列が前記信号方式フレーミングパターンをエミュレートしないようにするために、前記データビット系列内の所定の場所にスポイラビット(SB)を含むことを特徴とするデイジタル伝送方式」であることは当事者間に争いがなく、挿入されたデータビットが5ビット以下のビット数である場合これが6ビットの信号方式フレーミングパターンと偶然同じパターンを含む可能性がないことは明らかである以上、必須の構成要件としてスポイラビットを含む本願発明のデータビット系列は6ビット以上のビット数のものであることが当然の前提とされていることは明らかといわなければならない。

被告は、データビットが例えば1ビットであるときでも本願発明のスポイラビットの役割を果たすと主張するが、スポイラビットはデータビット系列と信号方式フレーミングパターンとを誤認しないためのものであり、受信側で信号方式フレーミングパターンと区別され、正しく例えば1ビットのデータビットとして識別され集められた後に、その集められたものが信号方式フレーミングパターンと誤認されることはありえないから、この被告主張は採用できない。

また、本願発明のフレーミングパターンは、6フレームごとに挿入された信号方式ビットを有する信号方式フレームを識別するためのものであることを考慮すれば、このようなものとして正常に機能するためには、信号方式フレーミングパターンとフレームの相対位置関係が時間の経過とともに変化するようなものであってはならないことは当然というべきであり、正常に機能しないことの明らかな構成のものまで本願発明が包含すると理解するのは相当でないから、本願発明において挿入されるデータビットの数を明示的に限定する記載が本願の明細書に見られないとしても、そのビット数は6の倍数とされていると理解すべきであるといわなければならない。

被告は、6ビットの信号方式フレーミングパターンに例えば1ビットのデータビットを挿入した場合でも正常に機能するよう対応できる旨主張するが、採用できない。被告の主張は、最初の信号方式フレーミングパターンの立下がりで信号方式フレームを検出できたことを前提にしているが、どれが「最初」のフレーミングパターンであるかを識別するためには別途の手段が必要であり、さらに、いったん同期がずれたとき再び同期をとるにはどうしたらよいのか全く明らかでないからである。

また、6ビットの信号方式フレーミングパターンの後に1ビットのデータビットを挿入し、その後の5ビットをダミー信号として無視することを前提とする被告主張も採用できない。挿入するビットを6ビットとすること以外に5ビットをダミー信号として無視する理由が理解できず、結局のところ、挿入するデータビットを6ビットとしたうえそのうちの5ビットをあえて無駄にする以上の意味をこの方式に認めることができないからである。

4  以上のとおり、審決は、相達点〈1〉につき、肯認することのできない理由に基づき、当業者にとって設計的事項にすぎないと述べるだけで、それ以上の理由を挙げておらず、この点に関する被告の主張も前提において既に誤っているものであって採用できないから、結局、審決の相違点〈1〉についての判断は誤りといわざるをえず、この誤りがその結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は違法として取消しを免れない。

よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 木本洋子)

昭和63年審判第8488号

審決

アメリカ合衆国 10038 ニューヨーク、ニューヨーク、ブロードウエー 222

請求人 ウエスターン エレクトリック カムパニー、インコーポレーテッド

東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル602号室

代理人弁理士 岡部正夫

東京都千代田区丸の内3-2-3 富士ビル602号室

代理人弁理士 安井幸一

昭和54年特許願第156944号「デイジタル伝送方式」拒絶査定に対する審判事件(昭和55年6月16日出願公開、特開昭55-79546)について、次のとおり審決する。

結論

本件審判の請求は、成り立たない。

理由

本願は、昭和54年12月5日(優先権主張1978年12月5日、米国)の出願であって、その発明の要旨は、昭和62年12月2日付け及び昭和63年6月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。

「フレーム内へ組織された時分割多重デイジタルメツセージ信号を伝送し受信するデイジタル伝送方式であって、各フレーム(例えば第1図)は複数のメツセージチヤネルのそれぞれからのPCMワードとフレーミングビツト(フレーム同期ビツト)とを有し、ここに各メツセージチヤネル用の信号方式情報は、6フレームごとに個々のPCMワードの最小下位のビツト位置(例えば8)に信号方式ビツト(例えば1-BITの信号)の形で伝送され、信号方式ビツトの位置は1つおきのフレームの集合的なフレーミングビツト位置(例えばビツト193)により形成された信号方式サブフレームチヤネル内の6ビツトの信号方式フレーミングパターン(例えば111000)により認識されるようになしたデイジタル伝送方式において、

該方式は、前記信号方式フレーミングパターンを間欠的で周期的な方法で、データチヤネルからの多重データビツト(例えばDATA)のブロツクをその間に挿入しながら伝送することにより、信号方式サブフレームチヤネル中にデータチヤネル(例えばDATA)を時分割多重化するための回路(例えば第3図及び第8図)と、多重化サブフレーム・チヤネル中に埋め込まれた信号方式フレーミング・パターンを回復するサブフレーム回復装置(例えば第4図の40-43、第7図)とを有し、前記多重化サブフレーム・チヤネルは、前記サブフレーム回復装置をして前記信号方式フレーミング・パターンを回復しそして前記データビツト系列が前記信号方式フレーミング・パターンをエミユレートしないようにするために、前記データビツト系列内の所定の場所にスポイラビツト(SB)を含むことを特徴とするデイジタル伝送方式。」

これに対して、原査定の拒絶理由に引用した「FUJITSU」、 Vol24、No6、P855~867「新PCM-24端局装置」(以下、引用例という)には、新PCM-24端局装置のフレーム構成及び回路構成が記載されている。

そこで、本願の発明と引用例記載の事項とを対比すると、両者は、フレーム内へ組織された時分割多重デイジタルメツセージ信号を伝送し受信するデイジタル伝送方式であって、各フレームは複数のメツセージチヤネルのそれぞれからのPCMワードとフレーミングビツト(フレーム同期ビツト)とを有し、ここに各メツセージチヤネル用の信号方式情報は、6フレームごとに個々のPCMワードの最小下位のビツト位置に信号方式ビツトの形で伝送され、信号方式ビツトの位置は1つおきのフレームの集合的なフレーミングビツト位置により形成された信号方式サブフレームチヤネル内の所定ビツトの信号方式フレーミングパターンにより認識されるようになしたデイジタル伝送方式において、該方式は、前記信号方式フレーミングパターンを間欠的で周期的な方法で、データチヤネルからの多重データビツトのブロツクをその間に挿入しながら伝送することにより、信号方式サブフレームチヤネル中にデータチヤネルを時分割多重化するための回路と、多重化サブフレーム・チヤネル中に埋め込まれた信号方式フレーミング・パターンを回復するサブフレーム回復装置とを有したデイジタル伝送方式である点で一致し、以下の2点で相違する。

相違点

〈1〉、本願の発明は信号方式フレーミングパターンを6ビツトで構成しているのに対し、引用例は信号方式フレーミングパターンを5ビツトで構成し、残り1ビツトを対局警報用に使用している。

〈2〉、本願の発明は、サブフレーム回復装置がデータビツト系列から信号方式フレーミング・パターンをエミユレートしないようにするために、データビツト系列内の所定の場所にスポイラビツトを挿入しているのに対し、引用例はそのようなスポイラビツトについて言及していない。よって、上記相違について検討する。

〈1〉について、

引用例では、信号方式フレーミングパターンを5ビツトにして、残りの1ビツトを対局警報用に使用しているが、これは、対局警報用に1ビツト用いることにより、フレーミンダパターンの認識率が低下し、かつ、データ伝送能力も低下することを熟知した上で、あえて重要度の高い対局警報用に1ビツトさいたと見るのが相当であって、この対局警報の必要性がなければ、その1ビツトをフレーミングパターンに割当て本願の発明のごとき6ビツトミレーミングパターンをとるであろうことは、当業者にとっては自明のことと言うべきである。従って、この相違点は当業者にとっては設計的事項にすぎない。

〈2〉について、

一般に、データビツト系列から誤ってフレーミングパターンをエミユレートしないようにするために、データビツト系列内の所定の場所にスポイラビツトを挿入することは、本願の出願前周知の技術事項(例えば、特開昭52-94996号公報参照)であり、かつ、この周知の技術事項を本願の発明に適用した点に格別困難な点は見い出せない。

以上のとおりであるから、本願の発明は、引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

平成1年4月20日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

請求人 のため出訴期間として90日を附加する。

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